T E C H N I Q U E
制 作 手 順 |
@板に吸湿性下地を6回塗布し、 表面をサンドペーパーで研磨して 平滑にする Aデッサンをトレースダウンし、 墨または水彩の黒で輪郭や暗部を描く |
B有色下地(油彩)を塗る 有色下地は、ローシェンナ、 バーントシェンナ、インディアンレッド、 又はグリーン系などを使用 (仕上がりに対し、補色系の色を選ぶ) |
Cテンペラ白で、明部や壁の模様などを、 描き起す |
Dそれぞれの部分に固有色を塗る 固有色はそのものの色に近い色を使う (半透明〜不透明に使う) |
E再度、明部をテンペラ白で描き起す | F固有色2回目 花びらの暗部を透明〜半透明に塗る 光によって出来る透過と反射の色も加える |
G固有色2回目の続き ガラスの部分にガラスの色を透明に塗る テーブルにも影の色を透明に塗る H仕上げ 花のハイライトと暗部を描く ガラスのハイライトと暗部も描く Iようやく完成! |
■下地剤 体質顔料(炭酸カルシウムなど)と白色顔料(酸化チタン)等を ニカワ水にふり入れ、混ぜて作る (ニカワ水の代わりにアクリルメデュームで代用も可) ■テンペラ絵の具 濃いめのダンマル溶液と全卵を使用、顔料は酸化チタン (濃いめのダンマル溶液は市販されていないので、 ダンマル樹脂をテレピン又はペトロールで溶解して作る) ■油メデューム ダンマル溶液+スタンドリンシードオイル+テレピン又はペトロールで作る (油絵具は市販のものを使用している) ※この様な、古典技法の材料はホルベイン等で発売されている |
西 欧 絵 画 古 典 技 法 |
全ての絵の具の原料は、顔料と呼ばれる色の粉です。 その顔料を油で溶いたものが、油絵具、卵で溶いたものが、テンペラ絵の具です。 ルネサンス時代に油絵具が発明されましたが、 それまでは、テンペラ絵の具が主流でした。 ボッティチェリの「春」や「ヴィーナスの誕生」はテンペラ絵の具による作品です。 ルネサンス時代の作品で油彩となっているものも、 実はテンペラを併用している場合もある様です。 テンペラは不透明で速乾性、 油絵具は透明で乾きが遅い特徴があり、 併用することによって、より自由な表現が可能になります。 当然、当時の多くの画家が併用したと思われます。 当時の油絵具は自作、またはお弟子さんが師匠独自の調合で作ったわけですから、 今の油絵具と違って、乾きの比較的早く、 緻密な描写も可能な調合であったと思われます。 レオナルド・ダ・ヴィンチは油彩を好んだようですね。 19世紀の産業革命により、油絵具は工業生産されるようになりました。 テンペラ絵の具は今でも画家が毎回自分で作ります。 私は白のみテンペラ絵の具を使用し、着色は市販の油絵の具を使用しています。 油絵具の油や、テンペラ絵の具の卵は、 画面への接着の役割をしていて、転色剤と呼ばれます。 水彩絵の具の転色剤はアラビアゴム、 アクリル絵の具の転色剤はアクリル樹脂です。 日本画では岩絵の具と言って日本独自の色の粉を使っています。 希少で高価なものも多く、転色剤は膠(にかわ)です。 西洋の顔料で特に高価だったのはラピスラズリー(青)で、 当時、金より高価でした。(現在もですよね? ) フレスコ画は壁画に使われるため、転色剤を使わずに描きます。 それは漆喰の壁が漆喰の機能を失わないため、また剥離を防ぐためです。 漆喰は湿度が高いと湿度を吸い、湿度が低いと湿度を放出します。 漆喰を部分的に塗り、水で溶いた顔料で、漆喰部分が乾かないうちに描き、 乾くと漆喰と顔料が一体になります。部分的に計画的に描いていきます。 最終的にテンペラで加筆することもあったようです。 レオナルド・ダ・ヴィンチはフレスコ画の表現力に満足できず(たぶん)、 湿気の多い場所の壁面に、油絵具で描いてしまったため、 「最期の晩餐」は完成して10年以内に剥離が始まったとか・・・。 修復を重ねて現在に至っています。 私が、なぜテンペラと油彩を使用し、 下地から古典技法に近い方法を用いているかというと、 その伝統的な技法こそが、 私が描きたいものを描きたいように描ける唯一の技法であり、 実際に500年の時を超える堅牢さを持っているからです。 |